劇団ビタミン大使｢ABC」上演台本「Hと非H」
作＝宮川賢

上演時の口上・ここ一番の大事な判断を下す時なのに、私情を挟んでしまったり情に流されたりして冷静に正しい判断ができない状況があります。情に流されて世話になった恩師をリストラで解雇にしづらい局面、好きが故に別れられない背徳の恋。それらは人間らしさからミスチョイスに繋がりかねません。
　正しい判断を下したいが為に自分の中の人間らしさ（Ｈ）を排除して「非Ｈ」になる技術が開発され広まりました。そしてそれぞれがここ一番の正しい判断を下せるようになったのです。
　無意味な縁故入社が減り、愛人と無駄に長引いた交際をしないようになり、ギャンブル依存症の実数は減らないものの博打が原因で無一文になる人は激減しました。非Ｈになることが社会を健全化していると思われ始めた頃、それによる副作用がいくつか出始めました。仮面夫婦が愛し合っているフリをするためにその技術を利用したり、その技術を利用するべき局面を見誤ったり。
　今回の公演はその「非Ｈ」になる為の技術に歪みが生じ始めてからの物語です。